2013年03月30日

複合動詞レキシコン [国研データベース開発版公開]

国立国語研究所より、データベース「複合動詞レキシコン」開発版が公開されました。

複合動詞レキシコン
http://vvlexicon.ninjal.ac.jp/

統語的複合動詞と語彙的複合動詞の複合動詞の区別は,影山太郎著『文法と語形成』(ひつじ書房,1993年)で述べられたもので,本データベースでは語彙的複合動詞のみを収録し,統語的複合動詞は除外してあります。


統語的複合動詞は生産性が高いので(登録するとなると膨大になるので)、語彙的複合動詞のみ収録のようですね。この統語的複合動詞については、「統語的複合動詞と語彙的複合動詞の区別」に詳しく説明されております。簡単にいうと、右側の動詞(V2)が左側の動詞(V1)が意味する動作を補文として機能するものです。ここで言う補文とは「V1すること{が/を}V2する」という意味関係になるものです。

この補文関係ということだけに着目すると、語彙的複合動詞統語的複合動詞の両方の事例が出てきてしまいますが……。例えば、語彙的複合動詞である「聞き逃す」なら「聞くことを逃す」といえますが、「逃す」というのはどんな動詞でも右側に来て良いものではありません(「話し逃す」なんて言葉は使われておりませんし、仮に使われていたとしてもまだ定着しているとは言えません)。一方、統語的複合動詞である「聞き続ける」なら「聞くことを続ける」といえますし、「話し続ける」なら「話すことを続ける」とも言えます。意味的に可能な組み合わせなら、問題ないと言われています。

このデータベースは特色は語構造の分類だと思います。

従来の辞書やデータベースになかった新しい特色は,複合動詞の語構造を表示していることです。これは,2つの動詞の連続体を,前項動詞(V1)と後項動詞(V2)の意味関係や後項動詞(V2)の意味機能に基づいて表示したものです。しかしながら,語構造の考え方は作成者(影山)の言語学的分析が背景になっているので,まだ証明された定説ではありません。ひとつの案として,今後の研究のために利用していただければ幸いです


意味分類されております(判定が悩ましいものもありそうですね)。計量的な研究もやりやすい時代になったので、計量的な観点から見直してみると新たな発見があるかもしれませんね。例えば、いま流行りのTwitterでも、どのような複合動詞が用いられるのかとか、あえて複合動詞を選ばなくても表現できるとか、複合動詞ではないと表現しにくいものがあるとか、いろいろ分析ができそうです。私自身はそういう研究をやる余裕がないのですが……。

文法と語形成 (日本語研究叢書 (第2期第4巻)) [単行本] / 影山 太郎 (著); ひつ...
文法と語形成 (日本語研究叢書 (第2期第4巻)) [単行本] / 影山 太郎 (著); ひつじ書房 (刊)

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2012年12月01日

新しい言語を学ぶ前に

言語といってもプログラミング言語ではありません。英語とか日本語とかの自然言語です。ブログタイトルは外国語教育で言われていることではなく、自分で思いついたことをちょっと書いてみます。

自分の思いつきとは、類型論を意識しようというものです。『言語類型論入門―言語の普遍性と多様性 [単行本] / リンゼイ・J. ウェイリー (著)』を読み始めました。「類型論」をきちんと学んだことはないのですが、入門レベルなら知っておきたいというところですね。また、間接的に英語以外の外国語にも目を通す機会が増えてきたので、類型論の知識があった方が理解を深めることができそうだと思いました。

なお、この本はLindsay J. Whaley. の“Introduction to Typology: The Unity and Diversity of Language ”の邦訳です。これは訳本の方が安いですね。訳者あとがきにはこんなことが書かれています。

第T部「言語類型論の基本」は類型論研究への導入として優れているだけでなく、言語学という学問分野への(再)入門としても薦められる。以後の各章も、世界の言語の多様性を尊重しつつ、その内に見られる類型と一般傾向をクリアに提示しており、文法理論への無用な偏向なき導入として、きわめて有効である。

このブログでよく述べていますが、学生時代をやったことでも定期的に入門レベルを復習しないと忘れてしまうんですよね……。なので、再入門として学びつつ、新しい言語の文法を学ぶ。そして余裕があったら、いろいろな理論(生成文法派・認知言語学派を問わず)でも考えてみたいですね。


言語類型論入門―言語の普遍性と多様性 [単行本] / リンゼイ・J. ウェイリー (著); Lindsay J. Whaley (原著); 大堀 壽夫, 山泉 実, 古賀 裕章 (翻訳); 岩波書店 (刊)

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2012年07月16日

取り立て助詞と機械翻訳

ひょんなことから取り立て助詞について調べてみました。その備忘録です。今回取り上げるのは日本語の取り立て助詞だけ」と英語の副詞“only”を使った文です。まず最初に“only”の語法から確認します。

only は通例修飾する語・句・節の直前か, 時に直後に置く
――『ジーニアス英和大辞典』

「直前」か「直後」ですと、曖昧ですね。曖昧なものは仕方ない……。同様に辞書の事例を挙げてみます。

(1) 彼だけが昨日その問題を解いた。
(1a) Only he solved the problem yesterday.
(1b) He only solved the problem yesterday.

「彼だけ」なので、“He”の直前(1a)か直後(1b)ですね。

(2) 彼は昨日はその問題だけしか解いていない。
(2a) He solved only the problem yesterday.
(2b) He solved the problem only yesterday.

「その問題だけ(しか)」なので、“the problem ”の直前(2a)か直後(2b)ですね。“the”と“problem”の間にあると、“only”は形容詞になってしまって、意味が変わってしまうのは説明するまでもありません。

(3) 彼は昨日その問題を解いただけだ。
(3a)He only solved the problem yesterday.

「解いただけ」だから、“solved”の直前と直後かと思ったら、辞書には直前の事例(3a)しかありませんでした。動詞を修飾する場合は、直後は駄目だったか?これは調べないとわからないんで、今回は保留にしておきます(泣)。

(4) 彼はつい昨日その問題を解いた.
(4a) He solved the problem only yesterday.
(4b) He solved the problem yesterday only.
取り立て助詞ではないのですが、辞書にあったので取り上げてみた。“yesterday”の前後ということでいいでしょう。

上記の事例をみると、意味が曖昧なことがわかりますね。(1b)と(3a)が同じ英文です(onlyの位置が同じ)。(2b)と(4a)も同じ英文です。文脈がないとわからない曖昧な文だと言えます。ただ、辞書には「時に直後に置く」とありますので、典型的にはすべて(a)と言えそうですね。自分が英文を書く際には(a)のように修飾したいものの「直前」にしておこう。

現時点(2012年7月16日現在)での機械翻訳ではどうなるのか試してみました。試した翻訳サイトは以下のとおりです(リンク先はWikipedia)。

Google翻訳
Bing Translator
Yahoo!翻訳(クロスランゲージ社の翻訳エンジンを採用)
エキサイト翻訳(英語は東芝ソリューション社のThe翻訳エンタープライズを採用)
OCN翻訳(高電社の翻訳エンジンを採用)

それでは、同じように和英翻訳をしてみましょう。

(1) 彼だけが昨日その問題を解いた。
(1a)He was only solved the problem yesterday.
(1b)He just solved the problem yesterday.
(1c)Only he solved the problem yesterday.
(1d)Only he solved the problem yesterday.
(1e)Only he solved the problem yesterday.

Google翻訳はまだ文法的に誤りがある翻訳をしていますね。“solve”は第4文型をとらないので受け身にしてなおかつ目的語があるのはおかしいと言えますね。

(2) 彼は昨日はその問題だけしか解いていない。
(1a)Yesterday he has not only solved that problem.
(1b)He not solving the problem only yesterday.
(1c)He solves only the problem yesterday.
(1d)He is solving only the problem yesterday.
(1e)He solved only the problem yesterday.

だけしか〜ない」という難しそうな感じですが、Yahoo!翻訳とOCN翻訳はやりますね!

(3) 彼は昨日その問題を解いただけだ。
(1a)He is only solved the problem yesterday.
(1b)He's solved the problem yesterday.
(1c)He only solved the problem yesterday.
(1d)He only solved the problem yesterday.
(1e)He just solved the problem yesterday.

Yahoo!翻訳とExite翻訳は全く同じで正解で、OCN翻訳は“only”ではないけど、同じですね。Bing Translatorは“has solved”ということで「だけだ」のニュアンスがなくなってしまいました。

(4) 彼はつい昨日その問題を解いた.
(1a)He solved the problem yesterday.
(1b)He solved the problem just yesterday.
(1c)He solved the problem just yesterday.
(1d)He solved the problem just yesterday.
(1e)He only solved the problem yesterday.

Bing TranslatorとYahoo!翻訳とExite翻訳が同じ結果になりました(onlyではなく、justですが、justにしたくなりますね)。OCNは“only”を用いていますが、ジーニアスの定義に従うと、この位置だと意味が変わってしまいますね。Google翻訳は「つい」のニュアンスがなくなっています。

この結果について分析してみるのは楽しそうですが、専門外の自分にはできないと思うので(泣)、今日はここまで。機械翻訳については、言語学観点からの研究がなされているかもしれませんが……。今回の結果を見る限り、Yahoo!翻訳が一歩リードのようですね。

取り立て助詞は学生時代に統語論の授業で学んだ経験はありますが、分析はしていないので何か本でも読もうかな。統語論だったし、よく覚えていない……。



posted by unendedchaos at 21:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 言語学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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